EU理事会、ePrivacy Regulationドラフト修正案公開


EUの政策決定機関である欧州連合理事会(Council of the European Union)は、7月10日、ePrivacy Regulation(以下「規則」)のドラフト修正案を公開した。7月17日に開催される欧州連合理事会電気通信委員会(WP TELE)で議論される。修正されたのは第6,8,10条の条文と関連する前文条項。電気通信事業者ではない一般事業者にとっては、Webのクッキー(Cookie)利用に関する第8条および関連する前文(第20-24項)の修正が注目すべき点。以下に重要なポイントを解説する。

1 行動ターゲティング広告のためのクッキー利用に対する同意について
これまでの規則ドラフトでは、クッキーや「デバイスフィンガープリント」など、個人が利用するブラウザやモバイル端末を識別する識別子を手がかりにサービス利用者のネット上の行動をトラッキングするためには、目的を限定した上で利用者の同意が必要であるとされていたが、今回の修正案では、(1) クッキーなどの識別子の利用について同意を得る責任は、これらの識別子を利用する主体、たとえばサービス提供者、アドテック事業者にあること、(2)同意取得に責任をもつ主体が直接利用者の同意を取得できない場合は、他の主体に同意取得を要請してもよいこと、(3)一度取得した同意は、同じWebの再訪をカバーすることなどが追加された。

これらはオンライン行動ターゲティング広告(OBA)におけるクッキー利用を想定したものと考えられる。これまで、OBAにおけるクッキー利用については、利用者の同意を得る責任は誰にあるか、利用者との直接のインタフェイスを持たないアドテック事業者はどのようにして同意を取得すればよいのか、パブリッシャーがアドテック事業者に代わって利用者から同意を取得することができるのかどうかなどの論点をめぐりWeb広告業界で様々な議論があったが、今回の修正案で、アドテック事業者もクッキー利用についてWeb利用者の同意を得る必要があること、パブリッシャーがアドテック事業者に代わって利用者の同意を得ることができること、毎回のWeb訪問ごとに同意を取得し直す必要はないことなどについて、EU当局の政策方針が明らかになった。

2 クッキー利用をWebサービス利用の条件とすることについて
無料で提供するWebサービスを利用する条件としてOBAを目的とするクッキー利用の同意を求めることが許されるかどうかについては、これまでもEU当局とWeb広告業界やWebサービス業界との間で大きな意見の対立があった。EUの旧29条作業部会(現EDPB)は、今年4月に公開した同意ガイドラインの最新版において、サービス提供に必須ではない個人データ処理への同意をサービス提供の条件とすることは極めて望ましくなく、同意が自由に与えられたものではないとの推定が働くとの見解をとっていた。これに対して、IAB Europeなど広告業界は、このような規制は広告収入で成立する無料Webサービスが存続できなくなると反対の意向を表明していた。

今回の修正案では、webサービスに必須でないクッキー利用をサービス提供の条件とすることは「通常、比例性を欠くとは言えない」(would normally not be considered disproportionate)、とくに(in particular if)、利用者がクッキー利用に同意しなくても利用できる同じ事業者による同等のサービスを選択できる場合はそうである、との記述が追加された。非常に微妙な言い回しである。”in particular”がなければ、”if”以下の条件が成立する場合、つまりクッキー同意を与えなくても同じ事業者が同等のサービスを提供する場合に限って、クッキー同意をサービス提供条件とすることが許されるという意味になるが、”in particular”があることによって、”if”以下の条件が例示となり、何らかの特別な事情がある場合には、無料Webサービス提供においてOBAに対する同意を条件とすることは認められるということになる。広告収益がなければ無料で提供できないサービスについてOBAを目的とするクッキー利用同意をサービス提供条件とすることについては、今後も議論が続きそうだ。

3 ブラウザ設定による同意管理について
ブラウザ設定による同意管理に関する記述はすべて削除された。

4 同意取得が不要な必須クッキーについて
第8条の修正により、GDPR28条に準拠した処理契約を締結した外注事業者によるWebアクセス解析のためのクッキー利用、セキュリティ更新のためのクッキー利用などについて利用者の同意取得が不要とされた。

ePrivacy Regulationドラフト修正案原文:https://www.parlament.gv.at/PAKT/EU/XXVI/EU/03/00/EU_30006/imfname_10827644.pdf

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